ねじの回転、B.ブリテン

ベンジャミン・ブリテンの人気オペラ「ねじの回転」が、ローマのコスタンツィ劇場で上演されます。ローマ歌劇場管弦楽団とわずか6人の声楽家で演奏されるオペラは、プロローグと2幕で構成されています。このジャンルは室内オペラと呼ばれ、1946年の「ルクレティアの陵辱」、1947年の」アルバート・ヘリング」に続き、ブリテンの室内オペラとしては3作目にあたります。ヘンリー・ジェイムズの同名のゴシック小説に基づいており、原作と同様に不吉な雰囲気が漂う作品です。
「ねじの回転」は1954年9月14日、イタリア、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で、作曲者自身が指揮をして初演されました。ブリテンは、美術評論家で作家のマイファンウィー・パイパーに台本を依頼しました。彼女の脚本は、ジェイムズの短編小説に表されている腐敗と無垢というテーマを前面に押し出し、ブリテンの音楽はそれを見事に捉えています。オーケストレーション全体を通して、時にはオペラの全曲にわたって、変化し構築される主題を用いることで、物語の不気味な雰囲気が展開されます。ブリテンの音楽構造は、この時期までに確立しており、調性の選択や意図的な不協和音は、彼の作風の特徴となっています。プロローグの終わりに登場する12音技法の「ねじ」の主題はその好例と言えるでしょう。
プロローグは、これから起こる出来事のイントロの役目を果たしています。若い女性が、ある大邸宅で2人の子供の世話を引き受けたこと、そして、その子供たちの後見人とは決して連絡を取らないことに同意して初めて仕事を得たことが語られます。第1幕では、家庭教師となった彼女が家政婦に出迎えられ、これから世話をし、教育をほどこす子供たちを紹介されます。そこで、子供たちのひとりが学校を退学になったことがわかります。また、謎の男が塔で目撃されますが、それは召使だったことが後で判明します。その後、家庭教師は、元家庭教師のジェッスル嬢を見かけますが、家政婦は召使とジェッスルは死んだと説明します。子どもたちのうち、一人は不気味な歌を歌い、年下の女の子は幽霊が見えると思うと言い、家庭教師はとても不安な気持ちを抱きます。
「ねじの回転」は、幽霊の出てくるストーリーですが、超自然現象への誘いというだけでなく、緊迫間のある心理的テーマを、ニュアンスたっぷりに展開します。果たして家庭教師は子供たちを守ることができるのでしょうか。ローマ歌劇場で、第2幕の結末まで、どうぞお楽しみください。